「…しかしさ
我が子が目の前にいるのに
呆けた顔で、アズさん褒めるって
何事ーって感じだよね」
「あぁら。
あんたの、彼の前での顔には
負けるけどー?」
「 !! 」
……送って貰った日に
面識のある、アニキ筆頭に
車から降りて
全員総出で挨拶してくれちゃって
理由は
青山さんとアニキのは、
『一週間も、
娘さんを連れ回してたわけだし』
だったんだけど
他の人は
『ユカちゃんの母ちゃん
見てみたいー!!』
んで『彼』も
バスの中ではブスッとしてたワリには
言葉は無かったケド
キチンと挨拶してくれて
お辞儀、『彼』お得意の
顎からの会釈じゃ、なかった
――― 別に
付き合おうって話とか
したワケじゃない
手を繋いだ事も無いし
…キ…キスされた事も無いし
「ユカはあの人と
灰谷くんと、付き合ってるの?」
心を読んだみたいに
お母さんが、そう言って来た
「つっ 付き合ってナイ!!
…付き合ってって言われた事ないもん!」
「最近の子って、そうらしいねえ
"付き合おう"の話が無いと
一緒に二人でデートしたりしても
『付き合ってないから』で
その後の進展は拒否るって
何かで見たわよ?お母さん」
「…? 普通じゃないの?それ
別に友達だって
二人で遊びに行ったりするじゃん」
「そうだけどさあ
何か"契約"みたいだなあって
少し思ったのよ
言葉が無くても、自然にって
そういうのもアリじゃない?」
「お母さんは馬鹿だなあ
そーゆーのは
ヤラレて終わっちゃったり
するんだからね!
俺達付き合ってナイし。で
ポイとかするのは
男の方なんだから!
…学校で前、
ちょっと事件あったりしたし…」
「…あー その為の防御壁かあ
ある意味、今の子のが
用心深いのかもしれないねえ
あっ!イケネ!」
お母さんはダッシュして
ガス台の前へ
今日はグラタンぽい
「…ユカさ 」
「……何? 」
「…東京、行きたいんでしょ」


