伏し目がちに現れた表情は、
すぐに私を見て
私もその灰色の視線を
逸らさなかった
「…手 」
そう言ったら
『彼』は黒い、グローブも脱いでくれた
『……… シャツ脱げとか言うなよ』
「いっ!言わないよそんな事!!」
びっくりして怒ると
やっと『彼』が、笑顔になった
『……俺も顔、
見たかっただけだから』
―――胸がホントに痛くなって
そこで搾られた水分が全部
上にあがって来たみたいに
目に涙が溜まって行く
『彼』が緩く曲げた、手の甲で
何度も拭いてくれたんだけど
止まる様子は、全然なくて――
片手で抱きしめてくれた時には
「寂しかった」とか
「私も東京行きたい」とか
今は言っても、どうしようも無い
必死に隠してた言葉を
全部、口にしてしまっていた


