風に吹かれながら
少しの間
じっと海とか、
雲が流れて行くのを見てた
けどそれは、ほんの刹那で
『彼』は立ち上がり
私にメットを、再び渡す
―― 学校の外から見える
校舎の時計は
昼休み終了、五分前だった
校門から少し離れた所で
バイクは停まって
エンジンの音も、消える
私は降りて、メットを取ったけど
『彼』は、そのまま
足に振動が残ってて
まだバイクに乗ってるみたいだった
演奏してるライヴハウスから出て来た後
暫く耳の奥が、麻痺してる感じに似てる
『彼』のメットの顔の所は
薄いスモークみたいになってて
よく見えない
やっと私の口から出たのは
「……顔、見たい 」
それだけだった


