武藤は
まるで青山さんがライヴの後
ベースにやるみたいに
軽くストラップにキスをして
携帯に、着けた
「…"青山"のマネだー」
私がそうからかうと
「あ。わかっちゃった? 」と
武藤は笑った
「それに今日は
ちょっと良いな〜と思ってる
女の子とも話せたしね
よかったよかった」
「え マジで?!おめでとう!」
「……葉山さ
ニブイって皆に言われてるの
知らない?」
「何それ!!」
「…まあいいや 」
武藤は肩を落として
屋上への扉を開ける
―― 空は薄い青で
雲は一つも無い
もうベニヤ板に
下書きをしているクラスがあって
武藤が
「よっしゃ!今日中に
下書きだけは、やっちゃいましょうか」
「わかった!!」
――― 途中でユリちゃんが来て
差し入れに、ジュースをくれた
「…ユカちゃん
いつの間にムトーくんと
仲良くなったの〜?!」と
耳打ちされた
「え 同じ実行委員だし…」
「も…ムトーくんは〜
すっごい人気あるんだよ?!」
「へー でも、良い人だよね」
「…ユカちゃん
だから、クラスで実家委員になるの〜
阻止されなかったんだよね…」
「…だんだん
意味が判らなくなって来たよ
ユリちゃん…」
「…まあ、ユカちゃんは、
灰谷クン一途って事よね〜…」
「何、葉山は
灰谷のファンなの?!」
「うおっ!!
…ま、まあ、そんな感じで…」
「じゃあさ 今度一緒に
ライヴ行かない?
俺チケットとるからさ」
「ホントに?!そしたら皆でさ
…ゥゴ?!」
ユリちゃんに引きはがされ
入口に近い所まで
引きずられた
「どっ!!どうしたのユリちゃん!!」
「…んもぉぉ!!
どうしたのじゃないよ〜
……『彼』の前に
男子と一緒に行くの?!」
「…な だってファンだよ?!
それ意外何の関係も無…」
「見た方は、そうは思わないの!
それにムトークンだって
軽い人じゃないし
何も思って無いコに
一緒に行こうなんて、言わないよ?!」


