Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜






―― トイレから出た外
男子と女子トイレの入口から
少し壁があって

格子みたいに穴の空いた
模様の隙間から、
そっと向こうを覗いた




「……あずるが、そう言うなら」



―― 青山さんは
腕を組んで、ニッコリ笑わない

そのかわり
少し興奮したみたいな
ニヤッとした
薄い笑いを浮かべた


…真剣な顔をしてたアニキが

「……オメエは行けるよな
結局、青山も同じ
…"音の、怪物"…

そして池上は…
アイツは努力も相当するけど
『天才』なんだよな…」


『…真木さんだって
努力してるじゃないか 』


「…ここからは
努力がどうのって世界じゃねえんだよ

――努力なんかして当たり前だ

上手いとか、
その上の、天性のモノ
それがより、重要になってくる…」




「な〜にイジケてんの?クウヤン」

「なっっ!!?イジケてねえよ!
本当の事言ってるだけだろうが!」



「そりゃあ
世界中のドリーマーが
集結する街だもの…

自分より長けた人
見たことも無い才能のある人に
出会っても当然じゃない

それに

何のかんの言ったって
僕らは彼女を、
追わずには居られないしさ

ね? 土方さん」


「…土方とか言ってんじゃねえよ

そしてソコから覗いてるデバガメ!!
とっとと戻るぞ!!」

「 うあ 」


――― アニキはツカツカと大股
池上さんは後から追い付いて
その肩に、腕を廻す

池上さんは、もう片方の腕で
青山さんの背に、手を廻した


青山さんは
少し後ろを振り向いて
「 灰谷 」と笑って呼び

その声でやっと
『彼』はゆっくり、歩き出す




さっきとは打って変わって
笑い合う、皆の背中を見て

―――やっぱりこの人達は
スゲー カッコイイ

そう思う



『……ユカ !』


立ち留まって
『彼』が私を見て、呼んでくれた



ブーツの音は しなかったけど

『彼』の灰色の目と
その声が

ずっとずっと、
耳と目の奥に、残ってた――――