Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「はい ごめんなさい
ちょっとユカと、スタジオに入ります」


マキちゃんが
お母さんに、私がスタジオに入ると
電話した後
代わりに電話に出てくれた


学校で練習出来るから
スタジオに入るのは、ライヴの前だけで

――今、8時少し過ぎ
夜のスタジオ練習は
今まで二回位しか、入った事が無い


"嘘ついて、マキちゃんちに
泊まる事にしちゃえば?"って言ったら
青山さんが
「バレると後で余計心配されて
怒られるよ」と言い
……そうは思うけど
その案以外は思い付かなくて
マキちゃんに任せてしまった…


話しているマキちゃんに
青山さんが、自分を指さした


マキちゃんが
電話を青山さんに代わる

そして

「代わりました。 タカコの兄です。」


私とマキちゃんは
思いきり、吹き出した

『彼』まで笑い出す

皆で必死に、口を押さえて
笑いを堪える


『…あの人の声
変に他人、納得させる所あるから
安心していいんじゃない』と
『彼』が言う


ひとしきり、
大人の挨拶会話が繰り返されて
青山さんが、私に電話を渡した

お母さんは
最初に電話した時とは
打って変わったニコニコ声で
"メイワクかけちゃダメよ"とか
そーいう事を散々言って
電話を切った



「…青山さんが
嘘ついてるじゃないですかー!」

その笑った私の言葉に
青山さんはニッコリ笑って、腕を組んだ


『彼』が笑いながら
"兄です"と青山さんの真似をして
ちょっと似ていたから
私は大笑いで

でも、マキちゃんだけは
少しだけ、複雑そうに笑っていた



皆、車に動き
青山さんがエンジンをかける―――