Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜





皆、目を真っ赤にさせながら
車に乗り込む

来た時とは違って
小さな観光バスっぽい、青い奴

運転手は、赤池さん

「皆で一緒に、帰りたいじゃない」と
明るく笑った


「トラックとか、キャンピングカーは?」

「夜に、会社の人達が来てくれて
東京まで持って来てくれる」

「そっかあ…」





パパーン と

赤池さんは、
誰も姿の無い、海に
クラクションで挨拶


最後に乗り込んだアニキが
皆に飲み物を配る

座席の前には
ドリンクホルダーがあって
そこにお茶を挿した



ゆっくりバスが走り出すと

ナカマさんがマイクを持って
バスガイドみたいに
アナウンスを始める


『えー 本日は
赤池観光をご利用下さいまして
誠にTHANKS!でゴザイマっス。

………って事で
しんみりした空気はここまで!
真夏の大カラオケ大会
行〜く〜わ〜よ〜!!

まず王子!!!いらっしゃい!!』


ユリちゃん、シノの、
ビックリしたけどマキちゃんの
"キャーーーーッ"が
バス内に響き渡る


アズさんは笑いながら
途中まで青山さんに支えられて
一番前まで歩いて来た


『王子!
アタシからリクエスト、
いいかしら?』

『何なりと!!』

『じゃあ入れちゃう!!
―――"情念、真夏の恋火花"!!』


かかったのは、演歌のメロディー

「どこが明るいんだよ!!」と
アニキが笑いながら
ナカマさんを蹴って、皆
ゲラゲラ笑う

『あらやだ!テンポは激しいし、
詩の内容も、実は
ポジティブシンキングなのよ!!』

「うんうん!」とシノ


前奏が終わって
アズさんが歌い出した


「…やばい!!上手い!!」と
緑川さんが、
驚きと笑いの交じった表情で
背もたれを握って、前のめりになる

青山さんが、煙草を吸いながら
笑ってて
池上さんも、手拍子

ナカマさんがアニキに
マイクを渡すと
この歌を知ってたみたいで
一緒に歌い始めた



……アニキ
実は一番の勝者…?