「ししょー…」
マキちゃんは
腕を組みながら立ち上がった
青山さんを見ながら
微笑んで、顔をあげ
「 ……はい!」と答えた
すると青山さんが、ニッコリ笑って
車の後部席に置いてあった
マキちゃんの黒いソフトケースを開いて
赤い、禿げたレスポールを取り出した
ストラップを肩にかけて
長さを調節する
位置が腰の下になって
少し弾いて、やめた
ギターを弾ける事に驚いていたら
青山さんは肩からストラップを外して
ネックを持って、地面に立てる
―― そしてそのまま
ギターを持って
海の方へと歩き出した
――マキちゃんが、立ち上がる
『彼』は、それが解っていたみたいに
自分の背の後ろに手を着く
青山さんはジーンズのまま
どんどん海に入って行って
レスポールを大きく掲げ、た
――――海に向かって


