それだけ言って『彼』は寝てしまって
……私は、ドアの外に出た
一階の吹き抜けでは
アズさんとアニキと池上さん
青山さんが座って
真面目な顔で、話し合い
手摺りの間から足を出して
聞こえて来る声を拾っていたら
アズさんの次のアルバムの
イメージの話をしている様だった
「でもボウズ、良いのか?
今までのイメージが
はかない天使とか、
傷付いた堕天使とか…
そういう系だろ?
それを好きな奴は
"違う"って思うかもしれない」
「僕は、興味あるなあ
悪女とか、小悪魔な『Azurite』 」
池上さんは
カメラを構えて、アズさんに向ける
「…まず第一にオマエ
そんな悪女、小悪魔演技とか
表情とか出来んのか?
『悪党顔』じゃねえんだぞ?」
皆、爆笑して
言ったアニキも、笑ってる
けど、アズさんは
「…出来るよ」と言って
青山さんの方向を向き
黙って目をつぶって
青山さんの首に、白い腕を絡め
――― 碧い瞳を開いた
青山さんは
その視線を見つめて
アニキは、固まって
池上さんは
ファインダーを覗いて
ひたすらシャッターの音を立てる
「――――だーっ!!!ダメだダメ!
…洒落にならねえこんなの!!
―― そんな顔、町中に貼付けて
プロモなんかで流してみろ
警備なんかいくらあっても
足りなくなるわ!!」
「えーー
いい考えだと思ったのに」
池上さんが大笑いして
「それにアズルン
…その顔、青山くんいないと
無理じゃないの?
どんな役者さんでも出来る?」
「 わかんない 」
「…じゃあボウズ
オレでやってみろよ」
ソファーの背もたれに
両手を拡げて
片手でアズさんを挑発するみたいに
アニキが見つめる
……アズさんは
そのまま近付いたんだけど
アニキが泣きそうな顔で
アズさんの頭に、手を置いた
「……クウヤ?」
「…ゴメン
ボウズが、青山以外に
そんな顔みせるの
―――― オレが嫌だわ 」


