管理人さんに挨拶して
喫茶室みたいになっているロビーに入る
四人席には座らずに
海と空が見える、窓沿いの場所
硝子張りだから
もっと日が入って来て
暑いと思ってたんだけど
『特殊硝子』とかシールが貼ってあり
紫外線カット云々、書いてあった
「何、飲む?」
「あ 」
カップのジュースの
自動販売機の前に立つ岡田さんは
もう自分のは買って
私の分に、待機していた
「あの、じゃ オレンジ…」
ボタンを押して
出来上がりを待つ間に
タバコに火をつけてる
コトン、と
私の前にジュースを置いてくれて
タバコの箱も、ポンと置いたけど
中身がかなり、減っていた
「ごめんね
さっき、灰谷君がいなかったから」
「…いえ」
よく見ると、左耳に
ピアスの穴
「最近は、外してるんですか?」
「え…ああ だいぶ昔だよ
してたのは
もう何年もしてないんだけど
――塞がらないもんだね」
「あ」
……そんでた時ですか って
言いそうになって
慌ててやめた
…危ない危ない。
「ん?」
「…あ…あの
どうするんですかこれから
アニキ、アズさんに合わせる気
全然無いっすよ…」
「…ねえ どうするかなあ」
笑いながら、煙をはくけど
ちょっと途方に暮れてる風。
だけど突然
飛び上がるみたいにして
席を立って走る
私もキョロキョロしたら
―――かなり遠くに
アズさんの姿があった
…やっぱ見付けるの早い…
海を左側にして
海岸沿いを、歩いてくる
岡田さんの姿は
もうアズさんの目の前にあって
私もオレンジジュースをそのままにして
建物の透明な扉から
急いで駆け出した


