――― 三枚の紙
それを床に拡げて唸る
『…どうだった』
「………どうもこうも」
『彼』は私の横に座って
紙を覗き込んだ
『……愛じゃん 』
「…青山さんとアニキはまだしも
岡田さんまでってのは
意外だよ…」
…配った紙には
一日のデート予定欄と
理由の項目が、最後にあるんだけど
―――― 全員、予定欄は無記入
理由の欄には
『三日もデートしたら
アズが疲れる 』と
……全員、
辞退していたのだった
「………私、そこまで
考えてなかったよ…」
机に突っ伏して
あらためて皆のキモチを知った…
「…一応この事、皆に言って来る」
部屋から出ようとすると
車のクラクション
何事かと
ベランダから外を覗く『彼』が
『…赤池さんの車だ』と
身を乗り出した
「え?!」
グリーンのホロがついた
小さなトラック
助手席には、緑川さんの姿もあった
「灰谷!!」
タバコをくわえて、窓から手を大きく振る
彼も嬉しそうに笑うと
部屋を出て、一階に降りる音
青山さんも外に出て来て
賑やかに談笑が始まる
「僕が夕べ、電話かけたんだ」
「池上さん」
「…岡田さんが来てから
皆の空気が変わっちゃったんで
ちょっとヤバイなあって
あの二人も
岡田さんに会ってるし
社会人経験長いから
『まあまあ』が上手いし」
「…ストッパー…ですか?」
「そういう事
…やっぱり生アズルンの威力は凄いから…
クウヤンも、あの二人に謝りたいって
前々から言っててね
それで感情を一回開いたから
色々思ってた事
我慢してた事が、出てきちゃって
心配な感じになったから…
クウヤンは緑川さんのギターには
敵わないって話してるし
いい打ち水になるんじゃないかな」
「…池上さん 冷静だね」
「あはは
それだけが取り柄だもの
…いつも後ろから
楽しそうな皆を見て
喜んでるのが好きなんだ」


