Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



『…池上さん』


「うん わかってるよ

そんな話出しても、無意味なんだよね
岡田さんは他の誰かじゃなくて
アズルンに、出会ったんだから


ただやっぱり
貴方を信用出来る要素を
まだ僕は、一度も見てないから

…芸能人も見る人から見れば
水物商売だけど

青山くんは今、押しも押されもせぬ
売れっ子ミュージシャン

でも、その前もきちんと就職してたし

基本の青山くんは、
落ち着いた、男受けも良い人だから
僕がアズルンの父親だったら
挨拶しに来られたら、
別段、反対とかしないと思う


…貴方は地元では
有名なのかな?

お酒の蔵で、岡田醸造とか
ガソリンスタンドとか
岡田がついてるのは多いよね」



「……ウチの系列です 」


「やっぱりそうなんだ
うん 貴方の御祖父様や
お父様が経営してるんだよね


けどそこを離れたら

"…映像作家を目差す、24歳
男性
アズルンとは、
オンラインゲームで知り合った男"


どんなにあの子を好きだろうと
本当の気持ちがあろうと

この『リアル』しか
他人からは、見えないし
わからないんだ」



―― 岡田さんは

池上さんから手を離して
ストン、と
ソファーに、座った


「………だから
夢を叶えるまで

――― 会わないと 言いました…」


「でも我慢出来ずに、
こうしてやって来た」


「……………」



「…岡田さん それとね

――― 僕の映像の模倣は
もうやめた方がいい

去年も、指摘されてたはずだよ」



ビクリとして
岡田さんが、膝の上の、手を握る



「…僕の絵の中の
あの子の色を欲しいんだろうけど
あれは僕だけが見ている色だ


―― 言いたかったのはそれだけ

僕は僕なりに、貴方に対して
真剣に話したかったから
言い方とか、きつかったかもしれない


もう皆も寝よう

……僕らがザワザワしてると
アズルンも寝られないから」