Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜




「…ふざけるな 灰谷」


―― 青山さんの顔が
違う人になる

『彼』は窓に視線を巡らせて
青山さんはそれを防ぐ様に動く



『……手を離そうとしてる奴が
何言っても
………意味無いんじゃないの』





―― マキちゃんのギター …


…あの時
青山さんは本気だった

マキちゃんが
海に飛び込んで止めなかったら
……海に沈めてた……



『…皆そうなんだ

気に入る要素を見付けたら
欲しがって、欲しがって、
…手に余る事に気が付いたら
すぐ都合の良い理由をつけて
距離を置こうとする』


「……違う!!」


『…信じて、捨てられた側からすれば
途中の理由なんかどうでも
結果が一緒なら同じだよ…

一緒に居て喰らう傷なら
いくらついたって構わないんだ…


―― 俺はギターケースに詰められて
捨てられたよ
青山さん


…俺の頭が
少し人より良いって解ったら
とてもお金持ちの
綺麗な家に引き取られた


…良い服を着ても
御馳走を食べても
優しい両親が出来ても
大量のお弁当が並んだ運動会

…遊園地や、外国の別荘に行っても

俺はずっとあの
ギターケースの暗闇の中に
居るままだった


…… アズが
暗闇から出してくれたんだ


もしアズに取って
この世に居る事が
暗闇でしか無いのなら


…アズの望む光を見せる事が
俺には出来ないから

…アズがずっと持ってる
いつもは誰にも見せない暗い闇に
一緒に落ちてあげる事しか
出来ないんだ…」





―― 『彼』の灰色の目から

涙が 流れた