Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「このチェリーパイも
持って行こう」

そう言って彼女が
少し伏し目がちに下を向いた時

―― きっと
冷蔵庫の照明のせいなんだけど

一瞬消えそうに見えて
焦って彼女の腕を、掴んでしまった

自分で自分の行動に驚く

「あ、ユカちゃん他のがいい?」

「う ううん
チェリーパイ食べたいです」

「敬語いらないよ」

「は…う、うん」

「あれ?もしかして
冷蔵庫、こっちにしか無いのかな

―― リュージー!!」

つかつかと歩きながら
お湯への扉をガラリと開ける


「どうした?」

「そっちに冷蔵庫あった?」

「あったよ
酒と飲み物が少し入ってた」

「こっちすごいよ!
ケーキとかギッシリ詰まってる」

「うわ 贔屓だ」

青山さんが笑ってる

彼女はトレイに
ジュースとケーキを乗せて
一旦向こうに

そして戻って来ると
私の手に、髪留め
白い布に
青いストーンがついてるシュシュを、
一個手渡してくれた

「あげる 三個セットだったの」
「あ…ありがとう!」

彼女は笑いながら
自分の前髪を結んで
お湯に向かう

私は扉が閉められるのを待って
制服を脱いで、
浴衣を着る………

………着る時 どっちが下なんだっけ


少し悩んでいたら
青山さんが

「あずる」と言い
「うん」と

同時くらいに
『彼女』がまた戻って来てくれて
浴衣を併せてくれて
紐で結んでくれる

…見抜かれた
すっげー恥ずかしい…


「……す スイマセン」

「敬語いらないってば」

笑いながら言われて
少しシュンとしてしまう

その時また
話し声が大きくなる

アニキが入って来たみたいだ

「ユカちゃん
さっきのシュシュちょうだい?」

「…う うん」

私が腕を出すと
そこから抜いて
私の中途半端な長さの髪を
うまく纏めてくれる

なんだかちょっと、
自分で言うとアホみたいだけど
可愛い

「いこ」と手を引かれ
私も当たり前みたいに
彼女に手を渡した