空が紫から
濃紺になった頃
『彼』が海から上がって来た
私の手から
脱いだTシャツを取ると
それで頭とか体を、拭いてしまう
「まーた そういう事するー」
『…洗えばいいじゃん』
「そうだけどさー…」
『…そういえば、お前
家の人に、言って来たの』
……………。
「ああああああああああああ」
『………
空哉さんが、とっくの昔に
連絡してる
前から思ってたけど
お前、かなり行き当たりばったりだよね』
「…あ、あんたに言われたくないわよ!
窓から飛び降りるとか言うしさー!」
『…出来ない事は言わないよ
俺』
「………。」
『…まだ、悩んでるんだ』
「………悩んでるって言うか…
何を悩んでいいかも
よく判らなくなった…」
『……『Azurite』がキッカケ?』
「え? アズって言うか…」
『…ああ
『Azurite』って言うのは
野外の、オープニングアクトの
あのバンドの名前
元々は
あのバンドにつける筈の名前だったんだ
それが事件で
中途で
…だからアズが
ずっと目印になってた
空哉さんと池上さんは
ずっと連絡取り合ってたみたいだけど
…アズ
怪我のショックで
青山さんに会った頃の事
全部忘れてたんだ
だから、青山さんには言えなくて
…デビュー少し前かな
記憶が少しづつ、戻って来たのは』
「……それ
少しだけ先生に聞いたけど…
青山さん
それ、もう知ってるの…?」
『…最近ね
愕然としてたけど
納得もしてた』
「何に?」
『…コンテストで見たあの男いたろ
彼氏 』
「…やっぱり彼氏だったんだ…」
『…あの人にアズは
手に負えないと思う
青山さんしか、無理だって
今は感じてる』
「…どんな人だったの?」
『…いい男だよ
きちんとアズの事も、好きだと思う
でもアズのリアルに
正直戸惑ってるのも確か
芸能界とか
…周り、男ばっかりだしね
カッと結構する所あるし
自制もあまり、利かない』
「…青山さんと、反対だ」
『…かもね』


