―― クーラーの冷気とは違う
涼しい風と、酸素
一気に、目が醒めた
アニキは
『彼女』の方を向いて
「エンジンつけとくか」と笑う
青山さんが、寝てて、起きない。
『彼女』は
「ううん とめていいよ
窓、開けるから」
「じゃあ キーつけとくから
青山起きたら持って来させな」
「うん」
『彼女』にペコリとして
私は扉から出た
先に降りて伸びをしている『彼』に
声をかける
「後で、タオルケットとか
借りて持って来てあげた方がいいかな」
…ヘンな事言った覚えは無いのに
何だかクスリと、笑われて
気を使うでもなく
普通に、彼はドアを閉める
『…多分、寝たふりだから』
「え。」
『…傍から離したくないだけだから
好きにさせておけばいいんだよ
…アズも空哉さんも
わかってる』
「……そ、うなんだ…」
『空哉さん
少し、先に 海見て来ていい?』
「わかった
メシ、今日、夕飯は届くから
オレは少し部屋で仕事するけど
あ、携帯あんだろ」
『…最近は持ってる』
アニキは
わかった って顔で
ログハウスの方に歩きながら
軽い足取りで
こっちを向かないまま手を振る
それを見送っていると
『彼』の声
『…おまえも来る?』
「う…ん」
ログハウスは高台にあって
岩場の下まで
手摺り付きの階段が作られていた
…プライベートビーチとか
言うだけあって
人影が、私達以外、何も無い
ログハウスの真下が
建物の光で、少し明るいだけ
海岸も管理されているのか
砂浜には、缶とかゴミとか
全然無い感じがする
『…これ、持ってて
ちょっと泳いで来る』
「え
…………えええ?!ちょっ!!」
言い終わらないうちに
私の腕には
渡された携帯と、お財布
『彼』はシャツを脱いで
海の中へと入って行ってしまう
それを拾って
抱きしめたまま
呆然と、それを見ていた


