どれ位、時間たったんだろう…
木が両脇に
沢山生えてる森
山道を越えると
急に視界が開けて
――― 夕焼けの空が見えた
窓を開けて、外を見ようとしたけど
すぐにやめた
『彼』が
私の肩で寝てるから……
そうだよね
青山さんが、寝てないって事は
『彼』も、寝てないんだ
アニキはタバコを吸いながら
少しボリュームを下げたラジオと一緒に
歌を唄ってる
「もうすぐ着くぞ」
バックミラー越しに笑うアニキの顔が
会った時と全然違ってた
…"アニキ"も
ずっと緊張してたのかな…
―― 坂を登り切ると
かなり大きいログハウスと
その後ろに、黒いラインと
ガラスだけで出来たみたいな
四角い建物
右は崖で、森があって
左には、広い海岸線
――そして、海
赤と紫に染まって
空が、雲と一緒に動いてる
『…綺麗だな』
… 『彼』の声
起きてるのに
まだ肩には、彼の頭が乗ってる
鏡、
私の後ろの『彼女』と
目が合った
青山さんも
『彼女』の肩に、頭を乗っけてる
女同士、二人して、笑いあう
……この人は
なんて表情で、笑うんだろう
私、女だけど
物凄いドキドキする
これが男の人だったら
どんな風に感じるのかな
『コンパスを狂わす人』って
やっぱり目茶苦茶だ……
正直、少し
青山さんがああやってるのも
……嫉妬じゃないけど
嫉妬なのかな
…やな女だ。私………
――それが
『彼』だったらって思うと
自分の中に
今まで見た事ない火が見えそうで、怖い
リナとか、問題じゃないよ
あれは、努力だけど
きっと、この人は
居るだけで………ヤバイ
…普通に
女友達って、出来るの難しそう
マキちゃんも
孤高な性格だからなのもあるけど
女友達、あんまり多くないし
「到着〜。」
カンテラみたいな明かりが着いた
ログハウスの前に、バンは停まった
『彼』はスッと起き上がり
背を屈めて、
ドアがガラッと開けられる


