Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「教師してるってのは
聞いたけど
何も言わないで、去っちゃって
――礼状じゃなくて
キチンと礼に行こう……

―――…うわあ
何だこの縁……」



「それ本当……?」


――振り向くと
『彼女』が起きて
私の後ろに、
そーっと、席を移動して来た


「………あずる?!」

―― 青山さんが
すぐに居ない事に気が付いて
起きてしまった

『彼女』も慌てて
また後ろの席に戻る


「いるよ!ジュース貰おうとしてた」

その言葉を本当にする様に
『彼』は缶コーヒーと
コーラを『彼女』に手渡す

急いで彼女は
青山さんの横に戻ると
――その間もずっと
青山さんの目は、彼女だけを見てた

『彼女』は
ペットボトルを開けようとして
苦戦して
それを青山さんは開けてあげて
彼女が笑うと
…やっと安心した様に笑う



アニキが小声で

「……びっくりしたろ」と
呟く


――― でも私は

なんとなく、こんな青山さんを
解っていた気がする

じゃなきゃ
あんなベースの音
出せないと思うし

私のキモチ、わかってくれたり
黙って電話の相手してくれたり
しなかった気がするんだ…


送って貰った時の
あの

"今でも好きだよ"

あの声だけで、今のあの姿は
当たり前に


『…空哉さん
コイツ、見た目ほど、鈍でも無いよ』

「?!」

それを聞いてアニキは
「…そうなのかもな」と
二人して失礼な事を言う


―――青山さんと彼女は
手を繋ぐわけでも
…抱き合うわけでもなくて

ただ傍にいて
窓の外の、景色とか
二人で見て、話して笑ったり
『彼女』が持って来たお菓子を
二人で食べたり


それは本当に『普通の光景』で

でもそれが
何だか凄く『奇跡』みたいに見える


窓から何か
花びらみたいなのが入って来て
『彼女』の頭に付く

…それを青山さんが
光の中

少し首を傾げて
『彼女』も首をあげて
取ってあげた時の場面は

―――すごく切なくて
泣きたくなる様な、

優しい、光景だった