席は、アニキの真後ろ
話し声がしなくて
後ろを向くと
一番後ろの席で
『彼女』と青山さんは
まるで小さな子供みたいに
二人、すっかり眠ってる
…青山さん
いつも腕組んでるのに
本当に安心しきったみたいに解いていて
足も大きく、開いてる
その横で彼女も
そこに居るのが当たり前みたいに
青山さんの肩に頭を置いて
ぐっすり寝てる
…私は焦って、彼の顔を見た
すると後ろをむいて確認するけど
……『彼』まで幸福そうに、笑う
「……平気、なの」
思わずそう聞いてしまったら
『何が』 と
逆に
物凄い不思議そうに
聞き返されてしまった
「アイツら、昨日まで休み無し
朝方まで仕事だったんだよ
やっとオフ」
アニキが運転席からそう言う
『…アズ、病院連れていかなくていいの
野音の後も、倒れたし』
「……え?!」
「あれはあ、暴れ過ぎ。
――酸素吸って落ち着いたのに
青山が、パニック起こしたろ
……今回は青山を安定させる為に
ボウズ呼んだ感じだから
心配して、落ち着かねえし
…ホントあいつは…
仕方ないけどな
―――オレも一瞬焦ったし
灰谷が
落ち着いて対処してくれて
梅川さんも居てくれて、良かったわ」
『……当事者は、仕方ないよ』
「…アズさん
いつ、倒れたの?」
『…アンコールの前
だから出るのに、少し時間かかったんだ』
「……なあ、ユカちゃん」
「は、はい」
「オマエ、いつ、何で
あの事件の事知ったんだっけ」
「…担任の、永川先生が…」
「は?!」
「……その時、その場に居たみたいで
怪我したって」
「―――――…マジか……」
…アニキはハンドルに
顎を一瞬乗せたけど
また言葉を続けた
「…ユカちゃん
後で、その先生の住所教えてくれ
礼状出す」
「…え?!」
「あ…タカコの担任でもあんのか…」
「は…い」
「………その先生居なかったら
ボウズやばかったんだ
微妙に致命傷免れたのは
途中割り込んで、
庇ってくれた人がいたから」
大きな声が出そうになった


