Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「ユカちゃん」

「ししょー!」


……すごく小さな問題
『彼女』より先に
私の名前を呼んでくれたのが
もの凄く嬉しかった
かなり嫌な奴って、自分でも思うけど…


「真木から聞いて、驚いた
会えて良かった
出かける所だったから」

「…す、すいません…」

「灰谷に、会いに来たの?」


――お父さんみたいに笑う目

青山さんは
スニーカー、ジーンズを履いて
白いTシャツの真ん中には
葉っぱが一枚、プリントしてある
帽子は濃い緑で、白いロゴと
ツバの所に、チェーンが二つ

「持つよ」

そう言われて、ベース
肩に食い込んでいるのを取って、
青山さんが、腕に持ってくれた


「そ、そういう訳じゃなくて…
家、知らないし…

何処とかって…
考えてなくって…
あ…ありがとうです…」


「ユカちゃん」

「は、はい!」

「…今日は少し
色々な事忘れて、ただ、楽しもう」

「……は…い」


クラクションが、一回鳴らされる


ワーゲンのバンだ
色はブルー


運転席の窓から、マキちゃんのアニキが
親指を出して、合図した

青山さんに背中をポン、と叩かれて
でもその顔は、『彼』の方


「灰谷」

見えなかった棚の向こうから
『彼』が現れる

ツカツカと歩いて来ると
私の横に来て、
手にフリスクを渡された

「なに?」

『…おまえ、空哉さんの係な』

ニヤリと笑われて
車に押し込まれた



窓際に座らせられて
…『彼』は私の隣

ど、どうしよう…!!

マジで心臓の音
聞こえちゃうかもしれない距離だ…

…前を見ると
青山さんと『彼女』が歩いて来る

頭に相変わらず、
手で抑えながら
保冷剤を乗っけていたけど

青山さんが、自分の頭から
帽子をとって、何か話してる
『彼女』は「おお!」と言う顔をして
青山さんが
彼女の頭に保冷剤を乗っけて
帽子をポンと冠せる

少し大きくて
ちょっとズレた

アニキが、ぷって笑って
青山さんが笑いながら、
大きな手で、位置を直す


―― 『彼女』の横にいる青山さん