「…オレ自身は
ずっとやってたし
あれはたまたま
ステージの上だっただけで
今も、やってる
そしてこれからも、ずっと」
――そうやって
椅子に深く、腰かけて
足を組み替え、
ひじ掛けに手を置く姿は
なんだか王様のようだった
「――"アニキは…
王国を造ったの…?
ただ音楽だけをやれる空間っていうか…」
「そんな御大層なモンじゃ
ないけどねえ」
――ゴムを取って
一回髪をワシワシっとして
枝毛を見出した
……飄々と
核心の外側の会話が、流れていく感じ
――だから
思い切って、聞いてみる
「……『Azurite』が刺されたって
何でですか」
――聞いてすぐ、後悔した
テーブルに肘を置いて
前髪の枝毛を見て
顔は、髪に隠れてたけど
足で刻んでいたリズムが止まって
空気が一気に変わった
――向こうが話し出す前に
そんなつもりは全然なくて
…単純に、
その自分が今居る時間を変えたくて
去年、ライヴが終わった後
逃げて迷った『Azurite』を
助けた様に見えた人の事――
何か知りませんか
疑問に思った事、全部口に出してしまう
"アニキ"は
脅すでも、構えた感じでも無く
笑うでも無く
普通に、呟いた
相変わらず、枝毛は見たまま――
「―…オマエがあ
ハタチになっても
――――まだ音楽やってたら
教えてやる
今はまだダメ。」
「?!」
「―…これはあ
下手に聞くと、ダルいだけなんだわ
…青山への見方も
変わって来るだろうし
…タカコにも
ぶっちゃけまだ早えわ
奴は口は大人だけど
まだまだ、
王子様願望から、全然抜け出せて無いし」
「……………」
「じゃあ、一個だけ教えよう。」
「…え」


