Turquoise BlueⅡ 〜 夏歌 〜



「去年かなあ
新宿の駅、夜なんかに
皆ストリートミュージシャンが
やってる辺り

明け方、片付けしてたら
ガーゼシャツに、凄い印象的な"彼"が
俺の作品見始めて

――― この人がつけたら、
カッコイイだろうなあって…

"やめるし、あげるから
好きなの選んで"って言ったら

『…これ、全部 同じ場所の?』って

―― 値段交渉して来る人は居ても
そういう質問って、あまり無いから…

確かに俺、自分で外国行った時に
全部仕入れてきたんだけどさ

"どうして判るの?"って聞いたら
『…色』って」


「――…色 」


「知らない?
たまに『灰谷』が
胸に付けてる、飾りネックレス」

「知ってます!!」


― 去年、コンテストで
彼が素肌にしてライヴやって
その後でも、たまにしてるトコ
雑誌に載ってる――


「…タダでいいって言ってるのに
…結構石も銀も使ってるから
自分なりに最高傑作だったし
値段、かなりついてたんだけど

『次作る、材料費』って

………それからずっと
店に出す物も作りながら
『彼』に似合いそうな
アクセサリー、作り続けてる

まだあの飾りネックレス以上の
作れてないんだけどね

…作れたら…ファンレターでも書いて
贈ろうかなって思ってるよ」


「…お、お兄さん!
私――」

「ん?」


――…『彼』に
連絡出来るよ―――

そう言いかけて、やめた


置かれているアクセサリーを見ると
定番のデザインぽい中に
あまり見た事無い、ライン
そして、濃いブルーの石が
タマゴみたいに、入ってる


丸い、ターコイズ石が、
少し割れてるデザインで
そこから、銀の羽

そのデザインのキーホルダーや
チェーン、革紐のネックレスの前には
小さい紙が、ピンで止めてあって
『天使のヒナ』と書かれてた


「あ、あの!
……そこのキーホルダー二つ
下さい!」

「はい 彼氏に?」

「あ…えと
違うくって………

―― 夏休み終わったら
弟の親友が、転校、しちゃうから…」

「あら」と

お兄さんは
丸眼鏡の奥で、目を大きくした