はー
前が見えないなあ…
ホントに見えないけど…
パンフレット売り場は
人がいっぱいだ
ポスターを買ってる人も沢山
「…あ」
――― 公園の片隅で
アクセサリーの露店が出てる
鉄柵を背に
向こうを向いてる
シルバーアクセサリーだ
…帰りまで、まだあるかな
柵を握りながら
そこまで走る
「…あの!!」
「?!」
音楽堂の中からの声に
若いニットキャップを被った
細い男の人が振り向いた
「い、いらっしゃい?!
はは、そこから声かけられたの
初めてだ」
「毎日、いるんですか?」
「いやあ ここは
土日しかやらないから…
普段は、代乃木公園とか
新宿とか、色々
今日は、"CheaーRuu"が出るから…
チケット取れなかったんだけど
許可とってさ
公園内なら、音、聞けるから…」
「…マジですか」
――― そんなまでして……
「あ、何か目についたものあった?」
「あ…
ターコイズが、見えたから」
「プレゼント?」
「…あ、えと」
「…自分に愛情、友情を持つ者が贈ると
あらゆる邪悪から
守ってくれるんだってさ」
「……それ!」
「ん?有名な話みたいね
俺は……
もうアクセサリー売るとか
やめようかなって考えてた時に
…信じなくてもいいけど
"灰谷"に言われて、続けてる」
「……会ったん ですか…」
私は鉄柵を握って、しゃがみ込んだ
アクセサリーのお兄さんも
鉄柵に体をくっつけて
こっちを向いて、笑う


