何もしなかった『私』。でも、何も与えられもしなかった。私は『私』が許せない。だけど、こいつの罪は未来永劫、自分にさえ許されてない程、重い罪だったのか?
 私はいつの間にか『私』を後ろから抱き締めていた。
 本当は誰かにこうして貰いたかった。しっかりしなきゃと思いながら、誰かに甘えたかったんだ。
 『私』の小さな手が私の背中にまわる。必死にしがみ付いて、泣きじゃくっている。
「……ごめんな」
 もう捨てないよ。
 私だけは『私』を嫌ったら、駄目だ。私だけは『私』を許してあげよう。
 一度捨てた自分の欠片。私はそれを拾った。
 嫌だから捨てた。でも、大切な欠片だと思ったから、拾ったんだ。
 真っ暗な部屋は崩壊し、――光が訪れる。
 瞼を開けると、病院のベッドの上。手が温かい。見ると、愛する女性が握っていてくれていた。心配そうに見つめてくる。だから、私はもう大丈夫だよ、と笑った。
 頑張ったんだよな。
 何もしなかった『私』。それでも、あいつが歩き通したから、今の私があるんだ。
 もう離さないよ。
 『私』も、大切な私なのだから――。