チェリーをあげる。


バスルームの前でひとり真面目に悩んでいると、また伸さんが催促する声が聞こえてきた。




「雛ちゃん、早くー!」


「あっ…、はい…!」




仕方なく私はバスタオルだけまいて、伸さんのところへ行くことにした。




「お待たせしました…」




部屋に戻ると、


伸さんは腰にバスタオルをまいた格好で、テーブルの前に腰掛けて缶ビールを飲んでいた。




えっ…。




「伸さん、今日車でしたよね…?お酒なんて飲んで大丈夫ですか…?」




そうたずねると、




「ああ、今夜はここに泊まるからいいんだ」




伸さんはそう言って立ち上がり、




「雛ちゃんも飲む?」




なんて言いながら、冷蔵庫のドアを開けた。




えっ…。




「あの…、私達、今日ここに泊まるんですか…?」


「そうだよ。別に明日の朝とか特に予定ないでしょ?」




伸さんは私に缶ビールを手渡した。




「はい、どーぞ」


「……」




すっかり伸さんのペースにはめられてしまったけど、


私は彼の手からビールを受け取ると、椅子に座ってそれを胃に流し込んだ。




これらは全て、大人になるための儀式なんだ…。




そう思えば、伸さんの一挙手一投足だって何とか受け入れられるような気がした。