「大丈夫。それより、陽奈が心配…」


「え…」



この時、あたしの何かが動いたのが分かった。


でも、あたしは気付かないフリをしていた。



「嘘。そろそろ戻る。明日はちゃんと学校来いよ」



そう言って、あたしの頭の上に手を乗せる。



「うん…」



その時、ドキンって鼓動が鳴った。



何でだろ…。


あたしは、颯斗一筋で、颯斗以外あり得ないはずなのに…。


それに1回フッてるのに…。


今日のあたし、おかしい…。



「じゃあな」


「うん」



海斗先輩は、小さく微笑むと、軽く手を振って帰っていった。


何だかちょっと寂しい気もした。


でも、煙草で気を紛らわした。


煙を口から吐き出すと、落ち着く。



「あたし…先輩のこと好きなのかな…」



煙草を靴で押しつぶすと、空を見上げた。


今日は雨が降りそう…。


真っ黒に染まった空だった。