11月の下旬。

風邪も治りきらないまま、外へ出る。
ほんとは家で安静にしていなきゃならないことは、解ってる。

だけど、1人で家にいられる気分じゃなかった。
少しでも刺激が欲しい。そして人混みに紛れていれば、こんな気持ちを少しだけごまかせるような気がする。

風の強くて肌寒い日。
繁華街は、それぞれ別の目的の人達が集まり、
大きな音が聞こえては、また別の大きな音がそれを掻き消すような、不機嫌な連鎖。

みんなイライラしたり、笑ったり、騒がしく、混雑している。

真っ直ぐ歩いていても、
微熱のせいか目眩で足元が覚束ない。

転ばないように1歩1歩、確かめるようにゆっくり進んだ。

よく解らない虚しさが体を支配していた。
スクランブル交差点では、なぜか誰よりも早く歩きたくて、前に出た。
いつも行くブランドの店に入り、ブーツとバッグを買って、ご飯も食べずに、なんとなく電車に乗った。