坂井は理科教員室に入った。
各教員室はガラス窓になっていて、
外から中の様子が見えるようになってる。
あの封筒は手に持ったまま。
「ピンポンパンポーン」
校内放送の合図。
「理科、坂井先生。坂井先生。
お客様です。事務室までお願いします。」
封筒を机の中にいれた(右端一番上)。
出て行く坂井とすれ違った。
「…さすが、シュウさん。
手回しが早い。」
何もないような顔をし、
理科教員室の扉を開ける。
「失礼しま〜す。」
坂井の机の引き出しを開け、
あの封筒を取り出す。
「ちょっと、あなた。
何しているの?」
出たよ、化学ババァ。
明石 直美(あかし・なおみ)。
44歳。
何かと口出ししてくる。
「明石先生。
いや、坂井先生に頼まれましてね。
封筒を取ってきて欲しいって。」
ここでにっこり笑う。
「あら、そうだったの。ご苦労様♪」
オレ、自分でいうのもなんだけど、
顔、悪くない。
むしろイイ感じ。
明石はイケメンには態度がガラッと変わる。
一度教員室を出て、廊下の陰に行き、
封筒の中身を写真に撮る。
「おっし。」
坂井はまだ帰ってきていない。
今のうちだ。
再度教員室に入り、また坂井の机を開ける。
「ちょ〜っと、今度はどしたのっ?」
あら、明石、ルンルンだけど。
オレはさっき仕込んでおいた
封筒を取り出す(ちなみに廊下に無料配布
してある教材申し込み用の封筒)。
「これ、間違えちゃって。」
そしてまた微笑んでみたり。
「あらぁ、ドジねぇ、もぉ♪」
突っかかってきたのが
こいつで良かった、単純で。
封筒を戻し、仕込んであった封筒を持って
教員室を出る。
廊下で坂井とすれ違った。
なんだかご機嫌な様子。
…シュウさん、何したんだ?
