浅野 拓。

クラスではあまり好かれていないようだが

チャラい。

はっきり言えば、オレの苦手タイプ。

あんなヤツと絡んでたら、クラスから

浮いた存在になるから接触はできるだけ

避けたい。

オレだって人間だし、

楽しい高校生活送りたいわけよ。


授業中にオレが起きていることは、

よほど珍しかったらしい。

まぁ、浅野の観察しなきゃならねぇから、

しゃあねぇんだけど。

そのせいで、教師は無駄にオレに当てる。

「ここ、城井。解いてみろ。」

前に出ると黒板には数式。

…sin、cos、tan。

気が狂いそうな公式も、

問題を目の前にすればスラスラと出てくる。

やっぱ、オレ、天才なんだな(笑)


「10+15cosθ+6cos2θ+cos3θ

これでどうっすか?」

いつもは威厳のある数学教師に、

面倒だという態度をモロに出して答える。

「…正解。席に戻れ。」


席に戻るときに、浅野の横を通った。

よくもまぁ、こいつの授業で

ケータイいじれるもんだ。

机の下にかすかに見えたケータイの

画面をすれ違い様にちらっと覗いた。


[今日の放課後、4時に生物実験室

どうですか?]


…ラッキー。

いきなり情報入手。