今宵も雨が降る。

血の雨が──。



『謎の女性の変死体、首には噛みつかれた牙の痕』
新聞の一面にデカデカと踊る活字。

これは紛れもなく、

「ヴァンパイアの仕業……」

私、新堂芽実(しんどうめいみ)は連日起こるヴァンパイア事件を追っている言わば、『ヴァンパイアハンター』!ってそんなカッコイイものでもなく、地味で地道な『私立探偵』であります。
まぁ、でも私も一人でこんなコトやってるわけじゃなくて、パートナーが一人いるんだけど。

「流偉~っ!また寝てる……こらっ!!起きろ~ぉっ!」

午後の光に誘われて、とても気持ちよさそうにソファーの上でスヤスヤと眠っている様は、見ていて非常に腹が立つ。
こっちは犯人の足取りが掴めなくてイライラしてるっていうのにっ!!
皆様にご紹介致します。
このやる気の感じられないヤツが私のパートナー(一応)の如月流偉(きさらぎるい)。

はぁぁぁ……大きな溜息をついても当然彼に聞こえるハズもなく……。

「……ムニャムニャ……」

こっこいつぅぅぅ~っっっ!!!!!
一発殴って目覚ましてあげましょうかぁぁ~っ!!!
……と拳を振り上げてしまう自分が情けなくも感じる。

それというのも実は流偉は『ヴァンパイア』の父親と人間の母親の間に生まれた、ヴァンパイアの血を受け継ぐ歴としたハーフの『ヴァンパイア』。けれど母親に育てられたから本人曰く中身は『人間』なんだって。
勿論、見た目も。

「俺はハーフだけどな、人間が大好きだ」
これが流偉の口癖。

だから人間を守るために『ヴァンパイアハンター』しているんだって。
何より二年前に病気で亡くなった母親の遺言を貫くため、そして、行方不明になった父親を捜すため。
父親は物心ついた時には居なくて、それが当たり前の環境になってたみたい。
母親は……父の居所について聞いても「何も答えてくれなかった」と。
『ヴァンパイアハンター』をしていればきっと何かヒントを掴めると信じて。



『血……』吸いたいって思ったことないのかなぁ……。
私は未だに彼の『ヴァンパイア』に覚醒した姿を見たことがない。


でもいつかは血に飢えた『ヴァンパイア』になってしまうの?


流偉……。