あたしと彼のオトナな契約




車の空気が、ピンとはりつめるのが分かる。


あたしは何て言えばいいのか分からず、ただ助けを求めるように晋也さんを見た。


だけど晋也さんとあたしの目線はぶつからず、ただ彼は前を向いている。



「…ごめ…なさ……」


そう言うのが精一杯だった。



冗談じゃないことくらい、当たり前に分かっていたけど


今あたしが何を言っても、晋也さんを救える言葉はあたしの口からは出てこない気がして。



「何で謝んだよ。 お前が殺した訳でもあるまいし」


また前を向いたまま晋也さんは機械のように話す。


そしてまた、あたしの方は向かなかった。



「何ていう……人だったの…?」


「片桐有紗(かたぎりありさ)。 よく考えりゃあ、ただの幼なじみだったよ」