さっき車の中でしてきたじゃない。
そう思いながらもあたしは小さく頷いた。
あたしたちのするキスは、恋人同士の温かいキスなんかじゃない。
寂しさとか虚しさとかの感情を誤魔化すための行為でしかないの。
でもそれはあたしも晋也さんも知ってる。
ようやく晋也さんの腕が離れると、あたしは自分の唇を晋也さんの唇にぐっと近づける。
「……すると思った?」
しばらく止まってそう言い、ふっと笑う。
結局キスはギリギリのところでしないで、あたしはカートを晋也さんから奪った。
後ろから呆れたようについてくるのが気配で分かる。
いっつもあたしが良いようにやられっぱなしだもん。
たまにほんのちょっとからかうぐらい、いいよね。

