気がついたら無我夢中で走ってた。 もう本のことなんか頭に無くて、ただ今目の前にあった光景が目に焼き付いてて苦しかった。 静かな住宅地を走り抜けながら、ドラマみたいな展開を期待してた。 私の走り去る姿を柚杞は見つけてくれたんじゃないかなって、 追い掛けて来てくれるんじゃないかなって、 私を抱き締めて『あれは違う』って説明してくれるんじゃないかなって、 すごい馬鹿なこと本気で考えてた。 だから、 不意に近づいてきた足音が真後ろで止まって、勢いよく引き寄せられた時、 人生で一番涙が出た。