あまり家に帰ってこなくなったあの頃。
近所の奥さんたちに色々詮索された。

「最近ご主人にお会いしないですわね。」
「夜遅くのお帰りですか?
でもお洗濯物がありませんね。」
と知っていて、聞いて来た。

買物の行き帰りに 
近所の奥さん達に顔を合わせる。 
その度に身構えてしまった。 

 今日の事は、夫が帰ってきても
知らないふりをしていよう。
みつは、小さな秘密をもったような気がした。

 その夜は勿論、
翌日も何もその話には、触れなかった。
3日経ち、1週間経ち、何も変わらなかった。 

心配の余り 寝顔を覗きこんでみたら、
 「どうしたんだ?」
と目をつぶったまま聞かれて、
みつは、驚き声をあげそうになった。

 「珍しいなぁ。
 自分から寄り添ってくるなんて。」
と信太郎は、勘違いをして抱きしめた。
みつは思ってもいない事の展開に
恥ずかしくてたまらなかった。

 時が流れて、夏が来ても何の変化もないので、
 《あの女は、
 家を間違えたのかもしれない。
 人違いをしたのかもしれない。》

などとのんきに思っていた。