俺はそれからのまりえの変化に戸惑った。
ふわふわとしていたまりえが、急に大人の女性になっていくのだ。

すごく魅力あふれる姿に、誰もが引き込まれ、触れていたい感覚に陥る。

いつか誰かにとられそうで、自分も変わらなければ、と思うほど嫉妬した。

気づけばまりえの足を引っ張っている。
俺が好きだったのは無邪気に笑っていてくれる、そういう存在だったころのまりえだ。

『別れたほうが、まりえの為だと思う。』

あれだけ別れたくなかったはずなのに、飲んでいたせいもあって、そういっていた。

眩しすぎる存在は時に自分を窮屈にさせる。
まりえの横に立っているのは、もう限界だった。


カーテン越しの騒音で目が覚める。
何時なのだろう。
目覚めは最悪だった。
シャワーを浴びながら昨日の記憶を呼び戻す。
別れたほうがいいと言ったとき、まりえは子供のように泣いていた。
胸の中がマグマになったように熱い。

別れたほうがいい、なんて、絶対に違う。こんなにも好きなのだ。
まりえに自分の苦しさを解って欲しくて、思いとは別の言葉を口にしてしまった。
昨日の言葉はただのエゴだ。

認めた瞬間、世界がかわった。
蝶は全てをしっているのだ。
恐れなどない。
そう、
自分が変わっていけばいいし、何かをとどまらせておくことなんて出来ない。

そう思った。

まりえは羽を持つ蝶なのだ。

まりえに伝えたい、電話なんかじゃなく、あいたい。
いい加減だな、と思ったけれど昨日のことを謝りたくて仕方なかった。



車の中で、全て打ちあけた。
そして、本当に好きなんだと。

するとまりえは、笑って、いった。

『あたしが変わっていくとき、夢の中で何度も男の人と愛し合っていたの。すごくリアルで、浮気と呼べちゃうんじゃないかなって。ある日、今日こそ相手の顔を見ようと思って確かめたらあなただった。多分、今日からのあたしとあなただと思う。』


*END*