「……ここなら、ま、大丈夫だろ」
 
「そうだね。ちょっと見てくる」
 
 
 キョロキョロと見渡し、誰もいないことを確認してからフレイはセリオンを降ろして言った。
 
 無意味に暴れ、体力を消耗したのかそれとも揺れに酔ったのか、セリオンはフラフラと近くの壁によしかかる。
 
 すでに、喋る元気もない。
 
 そんな彼を一度も見ることもなく、ウィンは元気にまた駆け出した。
 
 あたりを探るために。
 
 フレイはそんな彼女を、軽く手を振り送り出す。
 
 そして、どうしようかと悩んだ表情で、疲れきったセリオンを見た。
 
 
 
「さて、どうするか?」
 
 
 そのつぶやきが聞こえたのか、セリオンは顔色が悪いながらもフレイを睨みつける。
 
 
「……うん。とりあえず、こっちこい!」
 
 
 だがフレイには、彼の睨みつけをまったくといっていいほど気にしなかった。
 
 逆にセリオンの襟首をつかみ、少し引きずるようにして近くのドアの方へ行く。
 
 
「お前、何をする!?」
 
 
 今まで一度もこのような乱暴な扱いをされたことのないセリオンは、一瞬思考が停止し反応が遅れた。
 
 しかし、すぐに状況を理解し大声を上げるが、すでに彼はドアの中側に向かって突き飛ばされるようにして入れられる。
 
 後ろ向きによろめきながら数歩下がり、そこで何かにぶつかって、それもろとも倒れた。
 
 
「……痛い」
 
 
 倒れた際、セリオンは何かの上にいた。
 
 その何かは、一言つぶやくように心情をのべる。
 
 
 
「あ~、わりぃ、アリア! お前、そこにいたのか」
 
 
 セリオンを中に入れたフレイが、彼の下敷きにされている人物に向かって、頭を軽くかきながら謝罪の言葉を言った。
 
 同時に、後ろ手でドアを閉める。
 
 セリオンは、下の方で声がしたときに慌てて動きなんとか立ち上がった。
 
 そして、先ほどまで下に引いてしまったものを見る。
 
 それは、自分と同じ十六歳ごろの少女であった。