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大坂から帰京した優真達を待っていたのは、




───鬼だった……。




かつてこんなに憤慨している彼を見たことがあるだろうか、と言うほど凄かった。


「ぅおい!何でこんなことになったんだ!」


土方は愛用の煙管(キセル)でふぅーっと一息つくと、自身の視界に映る三人の副長助勤を睨み付けた。


一人はなんとも情けない表情で肩を落としており、一人は土方の話など興味なさそうに開け放たれた障子から庭を眺め、一人は懐から取り出した金平糖の入った包みを広げてぱくぱくと口に運んでいる。


「総司!お前、ぼりぼり食うな!優真、お前も人の話を聞け!永倉も何でそんなに暗いんだ!辛気くせぇだろうが!」


「だって土方さんが鬼みたいで……」そうぼそぼそ言った永倉の言葉が耳に入った優真は聞かなかったことにした。


「でも何で私達だけ呼ばれたんです?」

「ぁあ?そりゃあ、お前達がちゃんと対処していれば、この芹沢に斬られた熊川熊次郎という奴が死ぬことも、瀕死三名に負傷者十四名も少しは変わったかもしれねぇ。それに松平様や大坂の奉行所に面倒な報告に行ってんのは、何にも関係ねぇ近藤さんだ」


これでもかと言うほど眉間に皺を深く刻み込みながら言う土方に、優真は思ったことをそのまま口に出す。


「───ただ単に私達が言いやすい相手だっただけじゃん」


それを聞いた沖田はばっと立ち上がり、土方に詰め寄った。土方の衿を掴みガクガクと揺らす。


「土方さん!まさかそんなこと!」


「だーー!もう、うっせ!そ、そんなわけないだろうが。優真もへ、変なこと言うんじゃねぇ!」


どもりながら言う土方はなんとも信じがたかった。



やっぱり図星だ、と優真は心の中て頷く。こんなに判りやすい土方の態度も考えものだ。



じとーっと見てくる三人に耐え切れなくなったのか、「そういえば、仕事が溜まってたな…」と白々しく土方は言うと、部屋から三人を追い出したのだった。