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「先生も大変でしたね」

「ほんとだよ…。頑張ったよ、自分」

「ハハッ。でもその芹沢さんとやらは要注意ですね…きっと女だと思っているからそんな事を言ったんですよ!」

「判ってる。面倒な事は避けたいな…」

「先生なら上手く立ち回れます!」



だといいけど、と疲れ切った表情で言った優真は芹沢達と別れた後、街外れの古ぼけた民家へと来ていた。先程の会話で優真の事を先生と呼んだ少年に剣術を教えるためだ。



実はこの少年、優真が脇道で助けたあの時の少年だった。

名は林信太郎───可愛らしい容貌をしており背丈もあまりないので十四・五歳に見えるが、実際は十八歳。



優真が信太郎を助けた翌日、偶然道端で会うや否や

“壬生浪士組に入りたいんで剣術を教えてください!”

と必死に頼まれ、その剣幕に承諾せざる終えなかった。初めは心配だったものの信太郎は才能があるらしく上達は早かった。



そんな信太郎は昨年まで父親と二人暮しだったのだが、父親が亡くなってからは一人でこの家に住んでいるそうだ。

人懐っこい性格で、妙に勘が鋭く優真が女という事も直ぐにばれた。その事もあってか、屯所での愚痴を信太郎に洩らしたりと、優真にとって数少ない気の許せる仲になった。