「そんなわけ…」


「ないわけなかろう。お前自身が一番判っている筈だ。斬り合いでは一瞬の気の迷いが命取りになる。このままではお前直ぐ死ぬぞ。それにそんな奴は足手まといになるだけだ。

今だに震えた腕を持つ奴はな」





優真の心の中を見透かすように見てくる斎藤の双眼に優真は背筋がひやっとするのを感じた。



…っ、…気付いてた!?

でもそんな事は判ってる。
斬った後も腕の震えが止まらない、斬る事にも躊躇してしまう、自分はこの壬生浪士組には不要だって。

“この時代の人間じゃないから”

そんなのは理由にはならない、いや、してはいけない。



「よく考える事だ」



そう冷たく言い放ちそそくさと暗闇へ消えて行く斎藤の後ろ姿をじっと見つめた後、優真は再び腕の疵へと向かい合ったのだった。