屯所へと帰ってきた優真は自室へ足を進めていた。



夕餉までまだ少しあるし…

これは部屋でゆっくりするしかないでしょ。



珍しく屯所内は何時もの騒がしさはない。外に出ている者が多いらしい。

そんな状況に優真はふふっと自然と笑みが零れる。


「うっ」


突然廊下の曲がり角から現れた人物にボフッと勢いよくぶつかった。


──だ、誰?


鼻を抑えながら優真より一回りも背の高い相手を見上げる。



緩く結ってある少し長めの漆黒の髪。

鋭い目付きで無表情。

先日入隊した斎藤一だった。



あらら。

厄介な人にぶつかったかも。
総司の話では、私が来る前に試衛館に出入りしてたみたいだけど──何考えてるか読めない。



「斎藤?ごめん」

「……」



斎藤は優真の顔を穴が空きそうなくらいじっと見た後、無言で立ち去って行った。



やっぱり何考えてるか判らない。
謎が多い男だ。