「よぉ、優真。なーにしけた面してんだ?」


「…原田さんに声を掛けられたから」


「なっ!…酷い…初めはあんなに謙虚だったのにこんなに生意気になっちまって…」


「はいはい」


軽く受け流す優真に対してしくしくと泣き真似をする長身の男は槍の名手、原田左之助。優真曰く、なんとも熱い男らしい。


「そう言えば原田さん、永倉さんは?」


永倉と言うのは何時も原田とつるんでいる剣豪の永倉新八の事。原田が一人でいるのは珍しかった。


「あ〜、あいつは準備の為に色々動き回ってんだよ」


「準備?」


「おめぇ、聞いてねぇのか?あのな──」




話はこうだ。
清川八郎という者が将軍徳川家茂の上洛(※京へ行く事)にあたり警護をする浪士を募集している。身分も年齢も問わない。そこで試衛館からも何名かが参加するらしい。勿論原田もその内の一人。その為に永倉はここ最近忙しい、と。




原田の話を聞いた優真はハッとした。
まさか──…


「おい!原田!」


その時、怒りの音色を含んだ声が聞こえてきた。その声に近くの障子がガタガタと振動する。