「――刀?」
一瞬動きの止まった優真は目を見開く。 そして次の瞬間には目まぐるしく視線を、躯さえも動かしていた。
その尋常でない様子に沖田が心配気に声を掛けるが、今の優真には届かない。
刀の横には今し方使用した形跡のある刀の手入れ道具の様なもの。 後ろを振り向けば、部屋の隅に行灯。
それに気付けば次に探すのは電灯。だが、必ず部屋にあるはずの常識であるそれが見つからない。 更にはどんなに古い家屋でもあって当たり前のコンセントも見当たらない。
バクバクと激しく脈打つ心臓に手をやる優真は傍目から見ても分かる程に動揺していた。
――本当に何かがおかしい。
優真のすべての感覚が違和感、そんなものを感知していた。 ぶわっとよく分からない底知れぬ不安が優真を襲う。
自分に何が起こっているのか、それを知ったら後戻りできなくなるような気がした。
「――大丈夫ですか」
突如感じた肩の温かみにハッとすると、優真の顔を覗き込むように窺う沖田の手がそっと肩に置かれていた。
「…あの、ここは何処なんですか…」
柄にもなく取り乱した優真は、少しだけ冷静さを取り戻したようだ。 先程から保留になっていた最大の疑問をもう一度問う。
「そういえばまだ教えてませんでしたね〜…。 此処は試衛館、剣術道場です。 江戸市中にありますから――」
「え、えど?」
「はい?」
「ここ、えど?」
「え、えぇ…」
暫らくの間沈黙が続いた。
理解できない。 許容範囲を余裕で超えている。
――江戸といえば以前の東京の名、江戸時代。
真っ先に浮かんだのはこれで。
やはりこの人は頭がおかしいのだろうか。 優真は若干引き気味の沖田を一瞥する。
そういえば此処って江戸時代にタイムスリップしてしまったような部屋だよね、などと何気なく思ったことに優真の全機能が又もやストップしてしまった。
「タイムスリップ…?」

