「またやつは出たのか」


何故だろう。

こういう時に限ってこの人に会うのは。以前にも同じ様な事があった気がする。


無表情で立つ斎藤に信太郎は苦虫を潰した表情を見せた。



「…はい」

「はぁ……こんな事くらいで一々狼狽えていてはな…」

「先生はそんなんじゃないです! ただっ…ただ、時間が足りないだけです!」



拳を堅く握り締め反論した信太郎に斎藤は眉を潜めたが、それも一瞬の事でさも可笑しそうにフッと笑った。



「時間が足りないだと? 他の者はとっくに前を向いているというのに? お気楽過ぎて反吐が出る」

「それは人それぞれ…」

「それでは駄目だ」



――此処でやっていくには、と冷たく言い放った斎藤の言葉に、信太郎は強く現実を突き付けられた気がした。



「先生は、皆を守りたいんです、此処にいたいんです……どうして…っ、その気持ちを否定するんですか! 人の死に影響を受け、時には立ち止まる…っ…ここの者はそれすらしてはならないんですか!? そんなに優真先生がお嫌い…っ、なんです…か……ぅっ…」



必死に悔し涙を流すまいとする信太郎が、其処にはいた。