「近藤さん宛ての置き手紙が平隊士部屋にあったのを隊士が見付けてな、近藤さんに届けてこの事実が発覚。今、土方さんの命により事実確認を調査中ってとこや」

「それとこれとどういった関係がある」

「知らんか?最近、佐々木愛次郎とあの優真が親しげな事。やから、もしかすると優真がこの件に一枚咬んでんのかと」



それで山崎はその事で優真に話を訊きに行こうとした矢先、あの音が耳に入ったのだと言う。

それを聞いた斎藤が顎に手をあて思考に耽り出そうとしたのと同時だろうか。山崎と斎藤を呼ぶ声が聞こえ、二人は其方へ顔を向けた。



「なーにしてるの、二人共。こんな処で内緒話?」

「平助かぁ〜巡察ご苦労さん。早いって事は何事もなしって事かいな?」

「ご名答……っで、どうしたの、これ」



平間と襖を指差し、藤堂は面白いものでも見付けた様に楽しそうに笑った。



「平間が優真に仕掛けて失敗したんや」

「ふふ、平間の馬鹿さには驚くよねぇ、優真がそう簡単に負けるわけないのに……っあ、そう言えばさっき門の処で優真とすれ違ってさぁ、凄い速さで走ってたんだけど」

「はっ?」

「何かあったのかなぁ…」



藤堂の言葉に山崎は驚愕の表情を浮かべた。


「何でまたこないな夜に…」

「知らないよ、……けど相当焦ってたみたい。俺が声掛けたのに気付かないで行っちゃったし」

「…何や引っ掛かるな……」



うーんっと唸り出した山崎はそのまま口を閉ざしたが、直ぐにハッとすると「出てくるわ」と一言だけ残して足早にその場を去って行った。



「あー行っちゃった………ところで、さっきから一は何してるわけ?」



藤堂が来てから一回も口を開かず動きもしない斎藤に、藤堂は怪訝な表情を見せる。



「…何でもない」

「あーそう」



あっさりと一言で返され、不満げな藤堂は暫くぼーっと突っ立ていた。

だが、巡察のせいか次第に眠気が襲ってくるのを感じて襖と平間を斎藤に頼むと、疲れた躯を休ませる為に自室へと帰って行ったのだった。