「…っ、はっ…せ、芹沢局長!」
「……うん?なんだ、お主は。そんなに息を切らしおって…ヒクッ」
「立花!芹沢局長のお部屋に無断で入室するとは失礼にも程があるぞ」
酒の香と顔を紅くしできあがった男共が充満している部屋に乗り込んできた優真は、怪訝な表情を見せた芹沢と叱責する新見の言葉に迎えられた。
優真が訪れた処──それは八木邸にある芹沢の部屋だった。
自身の心音が自棄に速く動いているのが判る。しかし、それを落ち着かせようとする行動すら今は惜しかった。
優真は確信に迫ろうとしていた。
「芹沢局長にお訊きしたいことがあります」
「――あ?」
「その隣に居られる方は誰ですか?」
そう言って優真は芹沢の左腕に絡められた白く細い腕の主を一瞥した。
街の中でも目立つであろう華やかな着物を緩く着、芹沢の側まで来ていた優真の鼻腔を擽る酒の香に混じった白粉の香、全身から漂わせる色香、まるで遊女と間違えてしまう程の女がそこにいた。
(おそらくこの人は……)
「こいつは〜…お梅だ、美しかろう?」
「…あぐりさんは?あぐりさんはどうするのですか!?」
「あぐり…?はて、誰だそいつは」
やっぱり、……やっぱりそうだ。
──芹沢はあぐりを知らない。
嘘を吐いている可能性もなくはないが、今迄のことを纏めるとその可能性は限りなく零に近い。
この事が何を意味するのか。
「―――佐伯さん…」
貴方だったんですね。
然るべき黒幕の正体は。

