――人の気配を感じる。



躯はそれを敏感に感じ取り、何処からか這い上がっていくような感覚に襲われる。

優真は次第に意識がはっきりとしていくのを自覚し、自分が覚醒に近付いているのだと分かった。


ゆっくりと、優真の重かった瞼が開かれる。




「気が付きました?」


優真が目を開けたのと同時に、男だと思われる音色の声が耳に入った。

声のした方へ視線を動かすと、此方を見てニコニコと満面の笑みを浮かべている和装の男がいる。


誰だろうか、まずはその疑問が頭を過った。


そして次に自分が蒲団に寝かされていることに気付く。


(病院…? …なわけないか)


意識を失う直前のことを優真は思い出し、運良く誰かが倒れている自分を発見して病院に運ばれたのかと思ったが、どうやら違うようだ。 

視界に遠慮なしに入ってくる木目の天井と和室を見てそう思った。


「あの…貴方は誰ですか?」


いまいち自分の今置かれている状況が把握できず、優真は糸口を探るように目の前の青年に訊ねる。


「ああ…、起きて見知らぬ人がいたら誰だって驚きますよね。私は沖田総司と言います。昨日、雨の中貴方が倒れていたので此処まで運んできたんですよ。あのままにしておくと危なかったですし……貴方のお名前は?」


沖田総司という名前にどこか引っ掛かりを覚えた。……が、それが何なのかが分からない。

優真はそれをむず痒く感じながらも沖田の問いに答えるべく口を開く。


「立花優真です…なんか助けてもらったみたいで、ありがとうございます」

「いいんですよ! でも、何故あんな道外れに?」


――道外れ。


その言葉に優真はうん?と唸る。
学校の中庭を道外れなんて言っただろうか、と。


「…えーと、転んでしまって気絶しちゃったみたいで……あぁー…、すみませんが此処は何処なんですか? 学校じゃないみたいだし…」


此処が学校でないことは直ぐに分かる。それに病院でもない、ならば此処は何処なのだろうか。