桜の木の誓い


「あの女って……」


あぐりのことか、と訊く前に優真は平間の口から驚くべき事実を耳にした。


「お梅とか言う奴だよっ、最近はそっちにばっかり金を注ぎ込んでよ…」

「…は?あぐり、じゃ…なくて?」


相当近頃の芹沢に不満が溜まっているのか、愚痴る様に言葉を溢す平間の手は何時の間にか緩んでおり、擦れながらも声を出す事が出来た。

そして次第に落ち着きを取り戻しつつある優真は、そこでふとある事に気が付いた。


(これは……酒の匂い?)


鼻腔を擽る香を漂わすその根源に視線を向けると。

優真の視線が己に向けられているのには気付かず、平間は尚もグチグチと浮ついた口調で言っている。

灯りがないせいで確かではないが、恐らく彼の瞳は据わって顔は紅く上気しているだろう。


(たぶん芹沢さんの不満と私への疑いが、酔った勢いで爆発してこんな行動に出たんだろうなぁ。それに、私の事を観察してたのだって芹沢さんが構ってくれなかったからで……あぁ、納得……―――って、そんな事はどうでもよくて、)