一瞬。
一瞬、気を抜いたらこの状態。
(油断した……!)
背中越しに男独特の硬い胸板を感じる。
その感触に優真は自身の置かれた状況が危険な事を改めて認識した。
背後からしっかりと平間に躯を抱き締められ、口には手をあてられているが為に声を出す事も難しい、この状況。
(この人が簡単に引き下がるなんてある訳ないのに、)
今更後悔しても遅い事は重々承知の上なのに、せずにはいられなかった。
平間が横を通り過ぎ、廊下へ出たのを一瞥した優真が襖を閉めようとした時─────視界の隅に平間が動いたのを捕えた。
そして、平間の腕が自身の方に伸びてきて──…。
即座に反応し、その手から逃れようとした優真だったが、すっかり油断していた為に反応が遅れてしまい、既に背中には人の温かみがあったのだった。
「ハハッ、やっぱり女じゃねぇーのか?」
優真が着衣している小豆色の着流しの隙間から平間が手を入れようとしている事に気付き、優真は更に抵抗を強くする。
否、がむしゃらに躯を暴れさせている、と言った方が正しい。
「あんだけ稽古していたら鍛えられるものを、お前の躯は全くほそっちいまんまだ。おかしくねぇかぁ?」
「…っ、……」
暴れて口を開こうとする優真をものともせず、平間はがっちりと優真の口を押さえ込む。
それはまるで下手な言い訳は信じない、と言っているようで。
平間は卑猥な笑みで更に言葉を続けた。
「まぁ、そんなこたぁ、どうでもいい。最近女と遊べてねぇんだよ、……芹沢局長があの女に夢中になりやがったせいで」

