「…総司、それは何?」


優真は沖田の手にある物を見て、またか…と顔を引きつらせた。


(お金がないのに、一体何処から仕入れてくるんだ)


「もちろん!優真さんと食べようと思って買ってきた美味しい美味しいお饅頭ですよ」

「…お金は?」

「…………さぁ」

「え?なに、今の間は」


会津藩預かりになったとはいえ十分とは言いがたい、気持ち程度のお金しか貰っていない浪士組は、とても贅沢なんてしていられない状態だった。


最初こそまだゆとりがあったのだが、隊士が増えた今は毎日食べていくのがやっと。


それに見兼ねた芹沢が至る所から少々強引でも金を掻き集めてくるのだが、その芹沢が女や酒にと多額の金を使うのだ。


折角集めてきた金も直ぐに無くなるのが実状だった。


その状況を抜け出す為にも。
土方が、早くこの浪士組を何らかの形で一旗揚げさせようと野心を大きくさせている事に、優真は薄々ながら気付いていた。

恐らく勘のいい林も。




そんな状況の中──。


(何で総司は……)


優真は呆れた眼差しを、呑気に饅頭を頬張る沖田に向けた。

いつの間にか沖田は縁側に座っており、優真に持ってきたという饅頭さえも口に入れようとしていた。