月日の経つのは早いもので。
今日が佐々木とあぐりさんとの別れの日。


佐々木はここ最近頻繁に佐伯とコンタクトを取り、何やら色々準備をしているみたいだった。

勿論、私は知らない振り。

あぐりさんの方は、あれから一度ばったり街で出会したけど、芹沢さんには何もされていないらしく、私はホッと安心したのを覚えている。


無理矢理好きでもない男の人の所に行く事は想像出来ない程辛い事なのだろう。

それも想いが通じ合っている人がいるなら尚更──…。

だから、あの二人には此処から出て幸せになって欲しいと思う。



そこでふと私は、あぐりさんにとって佐々木の様な、そんな存在が私にできるのだろうか、と頭に浮かんだ。


「………」




いや、確実にできない気がする。

この手は血に染まっている、寧ろ染み込んでいる。そんな女の手を掴みたいと思う男が何処にいるのか。

確かに、ここに来る前は人並みに恋もしたし、彼氏とデートも普通にしたことある。

けれど。
今は全く持って状況が違う。



女子高生の立花優真ではない。


浪士組の副長助勤、立花優真。



それに加え、女としてではなく男として生きているのだ。

恋をしたいと思っている訳ではないけれど、もし、自然とそうなった時自分はどうするのだろう…………


「―――はぁ」


(考えても仕方ない)


それは無駄な事だ、と優真は雑念を追い出す。


(疲れてるからこんな変な事考えるのかも)


平間の事といい、優真の疲労の根本はまだ解決していない。





「優真さーーん!」


ちらりと声のした方を向き、優真は再び溜め息を零した。